ヨウ素関連調査研究事業

ヨウ素関連調査研究委員会

 平成11(1999)年4月に理事長に就任した入江 實氏(現当協会名誉顧問、東邦大学名誉教授)が平成12(2000)年4月成長障害の克服という観点から新たな課題として、ヨード欠乏症による甲状腺機能低下症に伴う成長・発達障害をとりあげ、これに関する調査研究並びに国際協力の検討を行うため、「ヨード欠乏症対策委員会」を発足させました。
 ヨウ素(ヨード)は甲状腺ホルモンの構成成分ですがその欠乏により甲状腺機能低下症を引き起こし、身体的及び知的発達障害を生ずることが知られています。わが国は海に囲まれて海産物からのヨード摂取が豊富で、比較的ヨード欠乏症の問題は少なかったと考えられますが、世界的にみるとヨウ素欠乏地域は極めて広く存在し、その地域に住む多くの人たちにヨウ素欠乏症による成長・発達障害を引き起こしています。
 このようなことから、1986年にWHO、UNICEFなどの国際機関の賛同も得て国際的な組織であるヨード欠乏症国際対策機構(International Council for Control of Iodine Deficiency Disorders: ICCIDD)が設立され活動を行いました。当協会は平成12年にICCIDDの主要メンバーを招き「ヨード欠乏症とその対策」と題した講演会を開催するなど、ICCIDDをはじめ国際的な甲状腺関係の専門家、国内では外務省、JICA、厚生労働省、ユニセフ、キワニス、日本ヨウ素工業会等関係機関と連絡を取りながら活動を進めてきました。また、当時の厚生省の関係機関である国際厚生事業団(Japan International Corporation of Welfare Services: JICWELS)とともにIDD撲滅のためのワークショップを開催し、入江實理事長がAdvisorとなり海外より専門家を招聘し1997年12月に第一回(参加10か国)、1999年2月に第二回(参加6か国)、2000年2月に第三回(参加5か国)のワークショップを東京で開催しました。本ワークショップの開催により、参加国16か国21名の研修が終了し、参加者によって各国での対策が継続されています。
 当協会のヨウ素欠乏地域に対する調査研究としては、カザフスタン、パキスタン、ウクライナ、ベラルーシ、ラオスなどでの調査研究に対する助成があります。平成22(2015)年からはヨウ素欠乏地域の発展途上国に対しヨウ素の供給による援助の可能性について、日本ヨウ素工業会とともにICCIDDの専門家、外務省等と連絡をとりながら具体的な検討を始めました。最近では、平成27(2015)年1月にスリランカ民主社会主義共和国に対し千葉県と協賛し、日本ヨウ素工業会から無償提供されたヨード酸カリ850Kgを送りました。
 この委員会の活動範囲はヨウ素欠乏症のみでなく、ヨウ素欠乏あるいは過剰と甲状腺疾患、その他の疾患との関連、日本人のヨウ素摂取量についてのナショナルデータ作成などに広がっており、平成25(2013)年に委員会の名称も「ヨウ素関連調査研究委員会」と変更しました。
 1986年に発足したICCIDDはU.N. Special Session for Childrenに2002年に置かれたThe Network for Sustained Elimination of Iodine Deficiencyと2012年に合併し、ICCIDD Global Networkとなりました。その後、2014年にICCIDD Global NetworkはIodine Global Network (IGN)へと名称を変更しました。IGNは世界を10の地域に分けてRegional Coordinatorと国毎にNational Coordinatorをおいています。日本はSouth East Asia & Pacificに属し、3名のNational Coordinator(入江實、紫芝良昌、布施養善)が活動しています。

【ヨウ素関連調査研究委員会】(2023年7月~2026年6月)

2024年8月現在   

委員長 布施 養善 Iodine Global Network
副委員長 紫芝 良昌 ゆうてんじ内科
  板倉 弘重 東京アスボクリニック
  伊藤 善也 日本赤十字北海道看護大学
  木村 康浩 日本ヨウ素工業会(伊勢化学工業株式会社)
  神馬 征峰 東京大学
  塚田 信 女子栄養大学栄養科学研究所
  長崎 啓祐 長野県立こども病院
  東出 正人 株式会社江東微生物研究所
  山下 俊一 福島県立医科大学
  横谷 進 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター
  吉田 宗弘 関西大学化学生命工学部

これまでの委員名簿   PDF