小児成長ホルモン治療適応判定
成長ホルモン分泌不全性低身長症
ヒト成長ホルモン治療適応判定依頼書等の記入に当っての注意 2024.10.1改訂
Ⅰ.新規治療の適応判定
骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症に対する成長ホルモン治療の適応判定は、2024年4月に原則として終了しました。しかし、行政手続き上など何らかの理由で必要な場合は、適応判定と適応判定書の発行を行います。適応判定が必要な場合には、下記の点にご留意の上、ヒト成長ホルモン治療適応判定依頼書(様式1)に記入していただき、成長科学協会へご送付下さい。記入に当っては、治療開始時の適応基準をよくお読みの上ご記入下さい。検査項目以外の欄も含め、可能な限りご記入下さい。また、成長ホルモン治療の継続について適応判定が必要な場合は、治療成績報告書(様式3)にご記入下さい。
なお、成長ホルモン適応判定依頼時に実名の記載ができない場合は、名前のローマ字表記の初めの2文字(「成長太郎 SEICHO TAROさん」ならば「TA」)と医療機関の診療録番号を記載して下さい。
適応判定の結果は、文書で郵送によりお知らせいたします。適応ありの場合は、登録番号を付けさせていただきます。なお、適応判定書には参考として、小児慢性特定疾病の適応基準を満たしているかについてもお知らせしてきましたが、2024年4月からは告示改定に伴いその必要性がなくなったことから、それを終了しました。
適応の判定は、まず骨年齢・身長発育などの前提条件をもとに判定し、その後に、成長ホルモン分泌刺激試験の結果等により最終判定をしています。
【適応基準の判定に最小限必要な項目】
1.暦年齢
2.骨年齢
当協会で行っていた骨年齢のコンピュータ自動読影(BoneXpert)のサービスは、2024年4月に終了いたしました。
3.身長
4.過去2年間の成長率
5.成長ホルモン分泌刺激試験の頂値
・インスリン負荷試験 | ・アルギニン負荷試験 | ・L-DOPA負荷試験 |
・クロニジン負荷試験 | ・グルカゴン負荷試験 | ・GHRP-2負荷試験 |
※成長ホルモン分泌刺激試験に関する注意事項
●甲状腺機能低下症を合併する場合には、甲状腺ホルモンによる補充療法を実施し、甲状腺機能が正常化した後にGH分泌刺激試験を行って下さい。その他、中枢性尿崩症、性腺機能低下症、肥満症等、他疾患がある場合には、それらの疾患の治療を行い、良好な状態を得てからGH分泌刺激試験を実施して下さい。成長ホルモン分泌に影響を与える薬物の投与(副腎皮質ホルモン等)および精神的因子(愛情遮断症候群など)があれば、可能な限りそれを除いた状態でGH分泌刺激試験を行って下さい。
●この試験は原則として2つ以上必要です。また、3つ以上実施した場合も、必ず全部の結果を記入して下さい。ただし、乳幼児で症候性低血糖症が認められ、ヒト成長ホルモンによる早急な治療が必要な場合、または、適応基準の4.に示されているような頭蓋内器質性病変による視床下部-下垂体機能障害の存在が強く示唆される場合や他の下垂体ホルモン分泌不全の合併が明らかな場合は、1種類でも判定しますが、症状の記載・検査所見などを添付して下さい。
●現在のGH測定キットは、リコンビナントGHに準拠した標準品を用いていますが、キットにより測定値が異なるため補正が必要なキットは補正式を用いて判定します(2013年3月15日以降の採血検体に対して適用)。補正式は、「成長ホルモン測定値の補正式について」のお知らせ(PDF)参照。
上記1~6の項目は、必ず記入して下さい。
更に、判定依頼書の裏面に同一日以外に実施されたすべての成長ホルモン分泌刺激試験の採血日の記載のある検査結果報告書(採血時間ごとのデータすべて)のコピーを添付して下さい。その他の、周産期障害・頭頸部の照射既往歴、睡眠中GH濃度、血漿または血清IGF-1(ソマトメジンC)値などは、学術的な解析の時に用いますので、データがありましたらご記入下さい。
Ⅱ.治療成績・中止・再開・転院の報告
1. ヒト成長ホルモン治療適応判定依頼書をお送りいただいて「適応あり」であった場合は、1年を経過する前に治療成績報告書(様式3)をお送りいただくように案内を差し上げます。しかし、治療成績報告書をお送りいただくかは、任意です。もし成長ホルモン治療の継続について適応判定が必要な場合は、治療成績報告書をお送りください。
2. 治療成績報告書を送付していただいた場合は、継続適応の判定を行い、適応ありの場合は新しい登録番号をつけます。この登録番号は、治療成績報告書が提出されるたびに、1年毎に更新されます。治療成績報告書が提出されない場合は、その年までで登録を一旦終了するとともに、翌年の治療成績報告書(様式3)の提出の案内は差し上げません。
3. なんらかの理由で治療を一時中断し、治療を再開する場合で、成長ホルモン治療の適応判定が必要な場合は、中断していた理由を記入し、中断前と中断中の身長・体重が分かるように記入した治療再開報告書(様式3)を提出して下さい。
4. 転院した場合で、引き続き成長ホルモン治療の適応判定が必要な場合も、わかる限りの事項を記入して転院報告書(様式3)を提出して下さい。
5. 治療を中止した場合は、任意ではありますが、できればその時点で治療中止報告書(様式3)を提出して下さい。
6. 治療成績報告書(様式3)を提出される際は、成績・中止・再開・転院のいずれかに○をつけて下さい。
Ⅲ.ヒト成長ホルモン治療適応判定書に記載する注意文と推奨文について
ヒト成長ホルモン治療適応判定の結果は「ヒト成長ホルモン治療適応判定書」でお知らせしますが、「適応あり」の場合に一緒に「注意文」を添付させていただく場合があります。従来から、次の8種類の注意文を添付してきました。すなわち、肥満、糖尿病、腫瘍、免疫不全・奇形・奇形症候群、症候性低血糖(初回)、症候性低血糖(継続)、慢性腎不全、軟骨異栄養症です。これらは、成長ホルモン治療を実施するにあたり必要な注意を改めて喚起するためのものです。
また、2024年8月に日本小児内分泌学会から「ヒト成長ホルモン製剤の適正使用について」が公表されたことを機会に、当協会では、「適応あり」と判定するものの、治療適応や治療継続について「慎重な検討を推奨する」ための推奨文を次の3つの場合に追加しています。すなわち、
1. 適応判定に用いられた成長ホルモン分泌刺激試験の1つ以上が申請日から遡って「2年以内」の実施でなかった場合
→「成長ホルモン分泌刺激試験の1つ以上が2年以内でないため、慎重に診断することを推奨します。」
2. 成長ホルモン治療開始1年目で、「a.成長速度≧6.0㎝/年、b.治療中1年間の成長速度と治療前1年間の成長速度の差≧2.0㎝/年」のいずれも満たさない場合
→「効果が不十分である可能性があることから、成長ホルモン分泌不全性低身長としての成長ホルモン治療の適応を再検討することを推奨します。」
3. 成長ホルモン治療中の成長速度が1cm/年以上だが2cm/年未満の場合
→「成長ホルモン治療の効果が期待できないので、中止を積極的に検討することを推奨します。」
Ⅳ.判定に対する異議申し立て
判定に不服がある場合には、異議申し立てが出来ます。その場合は、必ず地区委員(https://www.fgs.or.jp/business/growth_hormone/treatment_decision/committee.html)にご相談の上、地区委員の賛同が得られた場合は、異議申し立てをして下さい。
治療適応があることを支持するその他のデータ(成長曲線を含む)を添付していただくと、成長ホルモン適正使用推進委員会で検討される際に参考となることがあります。
◎さいごに、適応判定依頼書・治療成績報告書を提出される場合は、記載されたデータを学問的な解析に用いることについて説明した上で、同意の有無を記載して下さい(同意書:様式10)。署名をいただいた同意書は、各施設で主治医の責任で保管下さるようお願いします。